聖書に準えて

5月の暑い土曜日。久し振りに晴れ。以前からやろうやろうと思っていた大工仕事に精を出す。

といっても立てつけの悪いテーブルの脚に補強するだけ。なのだけど、手をつけたものの意外に苦戦。補強に使う板が厚すぎるんだ。めんどくさいね、ハンドドリルであたりをつけようとドリルの刃を探したが、ちょうどよい刃がみつからない。

途中で止めるのも癪だし。なんか替わりになる道具は…と出てきたのが、なんと錐。このご時世になんとアナログな。とはいえ他によさそうなものも見当たらない。

という訳で、はじめましたよ錐で穴開け。錐の柄を両手で挟んで、こう、きりきり、きりきりと揉み擦る。迷信に駆られた田舎もんが似非ご本尊をひたすら拝むように(笑)。しかし何十年振りだろ、こんな工作。日差しの強さも忘れるくらいの勢いで、なんとか必要なだけ開け終わりました、穴。

さて釘打ち込もうとして気がついた。右掌のちょうど真ん中にマメができて、潰れて血が出てる。両掌が熱くなるくらいの勢いだったからなあ、無理もない。絆創膏で傷口隠して釘打ち。血が滲んで絆創膏を貼り換えながら終了。

やれやれとおが屑を片づけていると、庭の奥からなにやら鳴き声が。そういえばさっきから微かに聞こえてはいた、近所の赤ん坊の泣き声か…でも違う。

ネコ、しかも仔猫。んっ? すぐ近くだ。庭の生垣の下を探す。いない。もし生まれたばかりの仔だったら、この暑さの中…、と思うと放っておけない気になる。

あっ、また鳴き声。もっと奥の庭の外れか。庭の外れは用水路に面していて、落っこちでもしたら大変だ、と思いながら静かに一歩一歩踏み出す。草が茂っていてよくみえない。草をかき分け、息を凝らし探る…、いない。

と、黒い塊が足元から飛び出した。真っ黒の仔猫。飛び跳ねるように庭の外れに。あっそっち行っちゃダメだ、と焦り気味に中腰で這うように追う。

やみくもに飛び跳ね走り回って、用水路際の敷石の影に隠れた。よし、動くなよ、いま抱っこしてあげる、と、用水路にすべり落ちないように膝まづいて手を伸ばす。もうすこし…のところで手が届かない。あっ、落ちたっ!仔猫が用水路に!慌てて飛び込んで、やっとのことで掬いあげた。両手で拝むように、宝物でも掲げるかのように。ああほっとした。

半身ずぶ濡れのまま、水を吸ったスニーカーをガッポガッポ言わせながら玄関までたどり着き、女房を呼ぶ。

女房、心得たもので、仔猫を見るや両手で受けとめ、すぐにケア。タオルやらガーゼやらで身体中拭いてやったのだけれど、この仔、女房の手の中でほとんど動かない。心なしか震えているようにも見える。

かかりつけの獣医さんに電話。いつもの女医さんに診てもらう。事情を話すと「水に落ちたり、人手に捕まったりが一時的にショックだったのでしょう、大丈夫そうですよ」と。一通り診察してもらい、帰り際に「もしかしたら、おなか空いてるかも…」と、ペースト状のエサを貰う。いつもありがとう先生。

帰りのクルマの中で、やっともぞもぞ動き出し、家に帰り着く頃には女房の手にあまるくらい元気を取り戻した。

それからの2日2晩、この仔とべったり過ごす、その夜からゴハンもりもり食べて、ショック症状も解消したようだ。慣れてはいないものの椅子の下にもぐりこんで隠れんぼしてみたり、一晩中部屋中を探索したり。なかなかに賢い仔で、わたしと女房の前で、ウンチもオシッコもちゃんと一人でできるんだよと、教えてくれた。

以前から野良猫を保護してくださるボランティアさんと親しくしており「仔猫のうちなら引き取り手がある」ことを聞いていたので、この仔もお願いすることにした。一旦、保護司の方に引き取っていただき、人に慣れた頃、里親探しをする。月曜日の午後、保護司さん宅に引き取られていった。

それから数か月、ボランティアさんから連絡。「あの仔、東京に住むご家族に貰われていきました。先住ネコちゃんのいる御宅だけれど、仲良く暮らしているそう」とのこと。女房もわたしも、もちろんよろんだ。嬉しいことにはちがいないが、ちょっとさみしいような。たった2日間だったけど、あの仔のことは忘れられない。もう、他人のうちの仔なのだけど。

周囲には親猫らしき姿もなく、おなじようなに仔猫がいる気配もなく、どこからやって来たかも知れず、いきなり現れた仔。掌の真ん中に穴の開いた大工仕事を手掛ける男に、水の中から掬い上げられた、奇跡のような仔。幸せになってもらいたい…いや、よくよく考えてみれば、あの仔が、そんな経験をさせてくれたのかもしれない。

いつもと変わらない日常の、ほんのちょっとした出来事の中に、そおっと奇跡を忍び込ませてくれた、真っ黒な仔猫。幸せになりたいのではなく、出会った人に幸せを運んでくれる仔猫だったのかもしれない。

 

※人気投票(苦笑)にご協力ください、

 

  よろしければクリックを↓

 

    にほんブログ村 ポエムブログ 短詩・五行歌へ
    にほんブログ村

 

 

 

| | コメント (0)

2019年7月20日 (土)

歓声!

久し振りに、女房と近くのショッピングモールへ。

買い物済まして、ジュースバーの店先に並んでいると、イベント広場から子どもの歓声が。

人垣を通して遠くから眺めると、なんとステージにはウルトラマンタロウが!

この時間、「ウルトラマンタロウの息子?/ウルトラマン何某」のライブショーなのだった。

   https://m-78.jp/news/event/

へえー、こんなに子供集まるんだ、と遠巻きにスムージー飲んでたのだけど。

悪者怪獣に負けちゃいそうになるウルトラマンを応援する、子どもの歓声凄いのよ。

ここはデパート(死語)のイベント広場なのよ、テレビのようなミニチュアやCGでリアルに創り上げられたシチュエーションじゃないのよ、

にも拘らず、目の前で、倒れ、怪獣に踏みつけられるウルトラマン、に、「がんばれーっ」と半分涙声で歓声をあげる子どもって…。

登場して50年を経て、いまだに子どもたちを夢中にさせるウルトラマン、ああそういえば近所の公園にウルトラセブンがやってきて、写真撮影会やったりしたな、どこかにあの時のポラロイド写真があるはずだけど、わたしにもこんなピュアな時代があったかな、…とか考えていたら、なんか涙が出てきちゃったよ。

 

※人気投票(苦笑)にご協力ください、

 

  よろしければクリックを↓

 

    にほんブログ村 ポエムブログ 短詩・五行歌へ
    にほんブログ村

 

 

 

| | コメント (0)

«ウルトラマンは「神」ではない