幸福
この子はほんとうに幸福だろうか? 添い寝しながら考えている。もしあのまま、野良猫のままだったら今頃どうしていただろう。飢えて死んでいたろうか、あるいはもっと裕福で優しい人が拾ってくれただろうか。この子はいま、どう感じているだろう? 今こうして、わたしの右の手のひらを枕に、静かな寝息をたてて眠っている子猫。
西日のあたるリビングで、ひとりと一匹、お昼寝のできる冬の午後。このなんでもないひととき、わたしにとっては、かけがえのない時間。
この子と偶然めぐり合い、すこしずつお互いを知り、互いを受け入れ、やっとここまで辿り着いた数ヶ月という時間。いっしょにお昼寝する、たったこれだけのことができるようになるまでに費やした日々。
考えてみれば、すべては偶然。なにひとつ確かなものはなかった。わたしが引っ越してきて、この家に住み、この子が捨てられたか迷ったかして、ある日偶然巡り会えて、女房がたまたま辛抱強い女性で、毎朝毎晩この子だけに餌をあげ、すこしずつ慣れさせてくれ…すべては偶然にすぎない。にもかかわらず、わたしはそれを奇跡のように感じている、それを心からよろこんでいる。
いまここにわたしがここにいるということ。凡人がひとり、ここにこうして生きていられること。そして、たくさんの小さな偶然が、奇跡となって取り巻いていてくれるということ。
右手の
手のひらを枕に
寝息をたてている
この子
この奇跡
いまこの子がほんとうに幸福かどうか、確かなことはわからない。けれども、いまこの時幸福であってほしい、心からそう願う。もしそうであったとしたら、いまこそが永遠であってほしいと、本気で祈っている。
いまこの時、いまこの時こそがすべて。いまここ、この時こそが幸福。ここが出発点であり、ここが到達点。この子に対して、そしてこうさせてくれている周囲のすべてに対して、感謝したい。それを、感謝の対象すべてを、もしかしたら神と呼ぶのかもしれない。だとしたら、やっと神を信じることができるんだと思う。神とは私を含むすべての存在なのかもしれない。
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コメント
何度読み返しても、温かみの深いお話ですね。
御夫婦で力を合わせ大切に育てている一つの命。
かけがえのない命。
子猫ちゃんは、まるで、お釈迦様の掌の上。
きっと、両者の体温が一つに重なり、程よい温かさになるのではないかしら?!
幸せな気持ちでスヤスヤと眠っている子猫ちゃんの成長を、これからも楽しみにしております。
投稿 あい | 2007年12月11日 (火) 22時37分